「新しい幸せを、わかすこと。」というグループ ミッションを掲げ、毎日の生活に欠かせない、給湯機器やガスコンロ等の厨房関連商品を幅広く提供している株式会社ノーリツ。同社は管理職のマネジメント強化と営業の行動変容による「営業現場のマネジメント支援」の実現を目指し、2018 年から 営業支援ツール(SFA) 導入/活用プロジェクトが推進されてきました。その中で、2 社の SFA 製品をトライアル導入した後、最終的に採用されたのが Dynamics 365 Sales です。採用の理由は、シンプルでわかりやすい操作性、スモール スタート可能な柔軟性のあるライセンス体系、そして既に導入が決まっていた Microsoft 365 との親和性の高さでした。その後 2 年以上にわたって活用された結果、マネジメントの強化や営業担当者の行動変容に大きな貢献を果たしています。さらに 2023 年 5 月には、連携ソリューションとしてセールス エンゲージメント サービス「UPWARD」も導入。導入/運用パートナーによる強力な支援の下、新たな挑戦を続けています。
営業現場のマネジメント支援のために求められた、属人化した営業情報をデジタル化するプラットフォーム
「お風呂は人を幸せにする」を創業の原点として、1951 年に設立された株式会社ノーリツ (以下、ノーリツ)。創業 60 周年を迎えた 2011 年には「新しい幸せを、わかすこと」をグループ ミッションに据え、お湯に関する技術を活かしながら、人と地球が笑顔になる「暮らしの感動」を届けるビジネスを展開しています。ただしその歩みは、常に順風満帆だったとは言えないものでした。
「2017 年には業績が芳しくない時期を経験しました」と振り返るのは、ノーリツ 国内事業統括本部 営業本部 営業企画部 営業企画室の小柳 拓馬 氏。当時は営業担当者の活動を定量的に把握する手段がなく、営業現場への方針や政策の展開状況を知ることもできなかったと振り返ります。また、現場の管理者もデータを元にしたマネジメントに苦労しており、営業担当者自身もまた行動の振り返りができず、重点課題に注力できていないという課題もありました。「ガス給湯器の流通構造は複雑で、営業の訪問先もガス会社様や販売店様など、実に多岐にわたります。顧客接点をこれまで以上に強化するには、営業活動の履歴をきちんと記録し、管理職のマネジメント強化につなげていくと共に、セルフ マネジメントによって営業担当者の行動を変容していくことが求められていました」。
しかし以前はそのためのシステムがなく、営業活動の履歴は個々の営業担当者がスプレッドシートや紙の手帳で管理していたと小柳 氏。情報共有は主にメールのやり取りで行われており、情報の属人化が進みやすい状況だったと言います。「各営業拠点で実際にどのような活動を行っているのかは、営業担当者本人とその直属の上司しかわかりませんでした。この状況を変えていくには、デジタル化が必須だと感じていました」。
そこでノーリツは 2018 年 5 月に、SFA の導入検討に着手。2018 年秋には最初のトライアル導入を実施します。しかしこのときに導入した製品は他システムとの連携に問題があり、正式導入が見送られることになります。
2019 年夏には次の製品のトライアル導入を実施。この時には、導入製品のユーザー インターフェイスがノーリツ社員にとって見慣れないものであり、営業担当者が使いこなせないのではないかと危惧され、SFA 導入プロジェクトは再び壁に直面することになります。また、最初からすべての機能を導入する必要があったため導入コストが高く、十分な費用対効果を得ることが難しいのではないかという指摘もありました。
この状況を打開するきっかけになったのが、マイクロソフトへの相談でした。2019 年 10 月にマイクロソフトのホームページにあるチャット機能で、SFA に関する質問を入力。これに対してマイクロソフト側が Dynamics 365 Sales を提案、導入パートナーも紹介したのです。その後、複数回のミーティングとフィット/ギャップ分析、営業本部スタッフによるトライアルを経て、2020 年 5 月に導入を決定。その理由は大きく 3 つあったと小柳 氏は説明します。
最上位機種の販売比率が増大し、方針展開と営業の行動変容を実感
第 1 はシンプルでわかりやすい操作性です。これなら IT システムに不慣れな営業担当者やマネージャーでも、短期間に使いこなせると評価されました。
第 2 は柔軟なライセンス体系。使用する機能に応じて料金が設定されているため、最初は最低限の機能でスモール スタートする、といったことが容易です。
そして第 3 が、Microsoft 365 との親和性です。ノーリツではこのころ、社内の情報共有基盤を Microsoft 365 へと移行するプロジェクトが進められており、これと連携できることも採用を後押ししました。
2020 年 6 月には東京支店への導入を開始。営業本部スタッフでのトライアル後、ここでは営業拠点に対するトライアルが行われました。その結果を受け、全国展開しても問題ないと判断。2020 年 9 月には全国展開が実施されています。
「今回の Dynamics 365 導入で特に配慮したのは、目先の効果を追うのではなく、中長期的な視野で提案を行うことです」と言うのは、導入パートナーとなった株式会社シーイーシー (以下、シーイーシー) 営業部の松川 剛士 氏。また、導入および構築を行うだけではなく、その後の運用保守まで継続的にサポートできる体制の確立も意識したと語ります。このような取り組みについて小柳 氏は、「実際に松川 氏を中心に各分野の専門家が参加するチームを編成し、当社の中期経営計画資料や IR 情報も視野に入れながら、システム連携などを提案してくれました。シーイーシーのようなパートナーの存在も、Dynamics 365 の大きな魅力だと感じています」と述べています。
それでは Dynamics 365 の導入によって、どのような効果が得られているのでしょうか。
まず注目したいのが、営業活動の履歴が可視化されたことで、営業担当者の行動変容が進みつつあることです。販売実績が不十分な場合には活動内容を見直す必要がありますが、過去の活動履歴や他の営業担当者の活動内容を参照することで、どこを見直すべきなのかがわかりやすくなったからです。もちろんマネジメントも変革されつつあります。管理者は勘や経験ではなく、データに基づく「事実」を見ながら、次の一手を指示できるようになっています。
加えて、方針や政策の展開状況が、営業活動から定量的に把握できるようになったことで、戦略性も高くなっています。その効果の 1 つとして小柳 氏が挙げるのが、ノーリツの最上位機種である「プレミアム給湯器」の販売実績が向上していることです。「これは 2017 年に発売したものですが、当初は販売数がなかなか増えない状況が続いていました。しかし Dynamics 365 を導入してからは、方針や政策の展開状況が把握できるようになり、適切な打ち手と営業の行動変容が相まって、販売数が毎年 1.5 ~ 2 倍になりました」。
そしてもう 1 つ見逃せないのが、マネージャーの業務効率化です。以前は営業担当者から日報を集め、それをまとめて週報を作成する必要がありましたが、Dynamics 365 に活動履歴が集約され、そのフォーマットも統一されたことで、この作業負担が大幅に低減しています。また営業担当者が替わる際の引き継ぎも容易になりました。過去の活動履歴がすべてまとまっているため、新任者はそれを見るだけで前任者の活動内容を把握できるからです。
「UPWARD」も導入し営業担当者の行動変容をさらに促す
このように大きな成果を見せている Dynamics 365 ですが、ノーリツはそのポテンシャルをさらに引き出すため、次の取り組みをスタートしています。それは Dynamics 365 Sales と連携する「UPWARD」の導入です。UPWARD株式会社が提供する「UPWARD」は、営業担当者が持ち歩くスマートフォンやタブレット端末を通じて、訪問先や関連情報を地図表示すると共に、滞在場所や滞在時間の自動記録、日報入力の簡略化なども可能にするセールス エンゲージメント サービス。UPWARD で取得した顧客接点情報は、自動的に Dynamics 365 に連携、蓄積されていきます。
導入検討を開始したのは 2022 年 5 月。その最大の目的は、営業の行動変容をさらに促すことだと小柳 氏は語ります。「UPWARD株式会社から『営業担当が重点課題に継続的に取り組むことができるように、仕事をゲーム感覚で取り組めるものに変えることで、結果的に成果につながる』という提案をいただきました。これに共感し、2022 年 10 月に導入を決定、翌年 5 月に展開しています」。
シーイーシーはこの決定に即座に対応し、UPWARD 導入のための専任チームを編成。UPWARD の活用を短時間で開始できる体制を整えました。「私どもも UPWARD の導入は、Dynamics 365 活用の望ましい姿だと考えています。シーイーシーでは『Convergent』というブランドにて、Dynamics 365 活用を促進するオリジナルテンプレートを提供していますが、2023 年 1 月にはこれと連携するソリューションの 1 つとして UPWARD を採用しています」(松川氏)。
UPWARD の導入および活用によって、営業担当者の行動はさらに変容しています。その具体的な効果として挙げられたのが、ハイブリッド給湯器の販売実績です。以前はなかなか成果を挙げることができませんでした。その最大の理由は、営業担当者は「自分が行きやすい顧客を訪問」する傾向が強いためです。UPWARD のアプリを使えば、訪問すべき重点顧客が地図上に表示され、訪問履歴も地図上で可視化されます。その結果、ゲーム感覚で重点顧客を攻略するようになり、販売台数を前年比で 1.5 倍に増やすことができたのです。
「自分が行きやすい顧客を訪問しがちというのは、他の製造企業様にも共通する課題です」と答えるのは UPWARD株式会社の朝倉 攻 氏。地図に訪問先を表示し、直感的に優先順位の判断と効率的な営業活動を実施できるのは、その行動を変容させるうえで大きな心理的効果があると指摘します。「ノーリツ様と同様の効果は、他のお客様のケースでも見られています」。
また UPWARD が 2023 年 7 月に「UPWARD CONNECT」をリリースし、Microsoft Teams との連携を強化していることも、高く評価されています。営業担当者が UPWARD から入力した顧客接点情報が Microsoft Teams にも自動投稿されることにより営業部門内のコミュニケーションがさらに活性化でき、Dynamics 365 のユーザー以外との情報共有も促進できると期待されています。
最後に「これまでの取り組みは経営層からも理解されており、期待値も高くなっています」と語るのは、ノーリツ 国内事業統括本部 営業本部 営業企画部 営業企画室で室長を務める吉川 徹 氏です。その最大の理由は、スモール スタートが容易な Dynamics 365 を採用し、着実に成果を上げてきたからだと語ります。「机上の議論ではなく、とことん本気で取り組んできたことで、マネージャーや営業担当者にも新しいことをしている、という実感が生まれています。今後も実践によって成果を上げながら、次のチャレンジにつなげていきたいと考えています」。
“この取り組みは経営層からも理解されており、期待値も高くなっています。Dynamics 365 を採用し着実に成果を上げてきたことで、マネージャーや営業担当者にも新しいことをしている、という実感が生まれています”
吉川 徹 氏, 国内事業統括本部 営業本部 営業企画部 営業企画室 室長, 株式会社ノーリツ
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