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2023/08/03

PaaS をフル活用し、リソースの最適化で開発に集中。B to Cビジネスのアプリ開発で、 Azure が力を発揮する理由

2023年3月にリリースされたアプリ「IVERSE(アイバース)」。自分の個性を起点とした交流が可能になる、新たなユーザー体験を提供しています。開発元の株式会社VARIETASは、2019年設立のスタートアップ。同社で開発責任者を務める牧田開さんは「システム基盤にAzureを採用してインフラを整備したことで、事業を加速できた」と語ります。

VARIETAS

個性でつながるヴァーチャル空間「IVERSE」

VARIETAS社のパーパスは「Friction 0」。世の中の制度や仕組みの中で生じる個人の断絶や障壁を、限りなくゼロにしていくことを目指しています。

「制度や仕組みには限界があり、摩擦・軋轢・障害による断絶を経験することで、取り残される人が生じます。そんな社会の理不尽に対し、それを解決する“新しい物語”を創り、さまざまな問題を超越することで、未来の当たり前にしていく。そうした理念が私たちの根底にあります。当社代表の木下隆太朗は、就職活動などで悩みを抱える留学生をサポートするところから事業を開始。試行錯誤の末、『IVERSE』の開発に辿り着きました」(牧田 氏)。

「IVERSE」は、自分の個性を“ピース”として表現し、ピースを通じて他者やさまざまな機会と出会うことができるサービス。友人同士で個性をシェア・肯定し合うことができるシンプルな設計が特徴です。人との交流によって自身が肯定され、新しい個性に気づき、自分をより好きになれる環境が提供されています。

「複数の個性をハッシュタグでリストアップしており、ユーザーは自分に合ったものを選択する仕組みです。ハッシュタグからピースが生成され、自分が持つ個性を簡単に視覚化できるようにすることで、視覚的に共感できたり興味を持てる人を探すようなユースケースを想定しました」(牧田 氏)。

パズルのピースをモチーフにした直感的なUIは、若者の“ワクワク感”を醸成することが狙い。約3年間、同社が築いた学生コミュニティへのヒアリングを通じ、ピボットを重ねて開発されました。

「私が入社したのは約1年前。最初はウェブサイトでサービスを提供していたのですが、文字情報がベースになることから、ワクワク感をうまく演出できなかったんです。そこでアプリへと方針を転換。研究と実証を重ね、ようやく2023年3月末にリリースできました」(牧田 氏)。 

Azure を選択した理由は、 Microsoft for Startups Founders Hub  

現在、VARIETASの技術スタッフは8名。牧田氏の担当は開発組織のリード、バックエンド実装、インフラ構築・運用です。その他、経営企画や採用活動などにも関わっているといいます。

「『IVERSE』のインフラ基盤には Azure を採用しています。しかし開発を始めた当時、社内における Azure の知見はゼロでした。どこの基盤にするかを検討している時、マイクロソフトの担当者に出会ったんです。」(牧田 氏)。

VARIETASとマイクロソフトの出会いは、経済産業省の「次代の EdTech イノベーター支援プログラム(Edvation Open Lab:EOL)」におけるイベントでした。スタートアップの支援プログラムである「Microsoft for Startups Founders Hub」を案内されたことが、 Azure 採用の決め手になったといいます。

「創業間もない私たちは、可能な限り事業開発にリソースを投資したいと考えていました。『Microsoft for Startups Founders Hub』で用意される最大150,000ドルの Azure 無償枠は、大きな魅力です。クラウドの費用は初期段階でこそ抑えられますが、どこかのタイミングで爆発的に増えることも想定していたため、『Microsoft for Startups Founders Hub』によって収支構造が変わってしまうリスクを低減できると考えました」(牧田 氏)。 

しかし Azure のノウハウがなかった同社では、開発プロセスや人材獲得への不安もあったといいます。

「Azure を使えるエンジニアの獲得に向け、採用で苦戦する可能性も考えました。IDaaSが含まれているかなど、他社クラウドとの違いもわかっていませんでした。しかし、マイクロソフトの担当者さんの手厚いサポートにより、 Azure で実現できること・できないことを整理していただいたため、早々に不安は解消されました。実際に触ってみると Azure が可能な限りOSSに準拠する思想のもとで各サービスが設計されていることがわかり、採用面に関しても扱いやすい人も多いと感じました。何も費用をお支払いしていない段階で、『ここまでしてくれるの?』と感じたほど、親身になっていただいています」(牧田 氏)。 

Azure Cosmos DB のマネージドサービスで、 NoSQL を採用

こうして始まったIVERSEの開発。牧田氏が特に工夫したのは、データベースの選定です。

「当時、IVERSEの仕様は構想段階でした。一度決めてしまえば簡単には変えられないため、データベースを定めた後も柔軟に変更していく必要性を感じていました。PMF前のスタートアップは性質上、『プロダクトの思考錯誤を何回できるか』がカギになるため、システムの柔軟性は重要な要素です。私は前職で RDBMS を扱っていたのですが、今回のケースには相応しくないと判断。データベースは RDBMS ではなく、スキーマレスな NoSQL である『MongoDB』を採用したいと考えました。マイクロソフト担当者さんに相談したところ、 MongoDB のマネージドサービスである『Azure Cosmos DB』を案内していただき、使わない手はないと思いました」(牧田 氏)。 

NoSQL により開発スピードを上げられたという牧田氏。今後のプロダクト改良に対し、「最適な環境を整えられた」と語ります。

「リリース間もない IVERSE は、“まずは走らせてみる”というフェーズです。機能追加やAPI連携など、今後も継続的にサービスをアップデートしていきたいと考えています。その際にテーブルのスキーマを変更する労力などを加味すると、 MongoDB の選択は正しかったと思います」(牧田 氏)。 

インフラを気にせずに開発に集中できることが、 Azure 最大の利点

牧田氏はバックエンドの実行基盤として、「Azure Container Apps」を利用しています。複雑なインフラを管理せずにコンテナー化されたアプリをデプロイできる、サーバーレスのコンテナーサービスです。

「当社ではサードパーティの APMサービスを使っており、そのエージェントをコンテナー上に起動する必要がありました。一つのアプリケーション内で複数コンテナーを起動できるサービスを探していたところ、マイクロソフトさんから紹介いただいたのが Azure Container Apps です。実際に使用してみて利便性を痛感したのは、 CI/CD の構築です。『Github Actions』と統合することで、インフラに疎くても簡単に CI/CD を構築できました」(牧田 氏)。

バックエンドとインフラを兼務する牧田氏にとって、 Azure の最大の利点は、「開発に集中できる」ことだったと語ります。

「現在はインフラに注力するフェーズではなく、他の優先順位を考えると、人的リソースも割きにくい状況です。そのため、サーバーを気にせずに開発を進められる Azure の環境はありがたいです。ボタン操作だけで CI/CD を構築できること、 Azure Cosmos DB の扱いやすさは、デリバリーのスピードを大幅に向上させてくれました。また、Azureのリソースはコンソールから手動で構築したとしても、テンプレートをエクスポートすることができます。テンプレートを再びインポートすれば、インフラを再構築できるので、コードを書かなくても再現性を担保することが可能です。 IaC に人的資本を投下できない状況においては、この機能は有効だと感じます」(牧田 氏)。

加えて、データ分析基盤の「Azure Databricks」も、リソースの最適化に貢献したそうです。

「私は前職で、ワークフローエンジンを使ってデータを流し込む作業を行っていたのですが、 Azure Databricks の『ノートブック』を使うことで、バッチ処理で十分に対応できることがわかりました。わざわざワークフローエンジンを組む必要がないことも魅力的だと思います」(牧田 氏)。 

マイクロソフトのパートナー企業と連携し、事業を拡大させていくフェーズへ

リリース後も、マイクロソフトとは進捗共有や技術相談を定期的に行なっているというVARIETAS社。 Azure の多彩な機能を使いこなす上で、大きく役立つ機会となっています。

「月に1度、 Monthly Sync という場を設け、技術的サポートや Microsoft for Startups Founders Hub の特典案内を受けています。『GitHub Enterprise』や『Miro』などツールにおいても無料利用枠が提供されおり、 OpenAI などの最新技術にも触れられることは大きなメリットです。 IVERSE は B to Cサービスという特性上、1カ月ごとに状況が変化し、新たな課題が生まれます。抱える課題や実現したいサービス像を投げかけると、柔軟に提案いただけるマイクロソフトさんの存在は、スタートアップにとって強力な助けになると思います」(牧田 氏)。

今後は IVERSE の軸である“個性データ”を活かし、教育やHR領域などB toB ビジネスも展開していきたいと意気込む牧田氏。就職活動や人事評価など、摩擦が起きがちな領域に飛び込むことで、「Friction 0」を実現したいと語ります。

「ミニマムでリリースしたIVERSEですが、まずは1年程度市場の反応を見ながら改善を重ね、PMFを達成したいと考えています。並行してHR領域などに事業を拡げることで、学歴フィルタや雇用のミスマッチなどの解消に、個性データを応用できるはず。その際には、マイクロソフトさんの豊富なパートナーさんとも連携させていただき、ビジネスを加速していきたいと考えています」(牧田 氏)。

“IVERSE では1年程度市場の反応を見ながら改善を重ね、PMFを達成したいと考えています。並行してHR領域などに事業を拡げることで、学歴フィルタや雇用のミスマッチなどの解消に、個性を応用できるはず。その際には、マイクロソフトさんの豊富なパートナーさんとも連携させていただき、ビジネスを加速していきたいと考えています”

牧田 開氏, 開発責任者, 株式会社VARIETAS

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