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2024/03/11

限られた労働時間でより大きな価値を、ノンコア業務をアウトソースできる「Smart Work コンシェルジュ」で、コア業務に対する社員の時間を創出

2016 年 11 月に「電通労働環境改革本部」を設置し、労働環境改革を進めてきた株式会社電通。その一環として行われているのが、社員のノンコア業務をアウトソースできる「Smart Works コンシェルジュ (SWC)」の提供です。その目的はノンコア業務から社員を解放し、コア業務に集中できる時間を「創出」すること。これにより、限られた労働時間内でより多くの価値を生み出そうとしているのです。サービス申し込みや案件管理には、Microsoft Teams や Microsoft Power Platform、Azure など、数多くのマイクロソフト製品を活用。2023 年 1 月には Azure OpenAI Service の利用も開始しており、生成 AI による問い合わせ、申込みの円滑化や、アウトソースされた業務遂行の効率化も進められています。このような取り組みによって、アウトソースに要したコストに対する社員の時間創出価値の割合 (ROI) が 2023 年末には 340% に到達。今後も生成 AI などを積極的に活用しながら「ノンコア業務の刈り取り」を行い、より多くの社員の時間を「創出」していくことを目指しています。

Dentsu Aegis Network

【パートナー】
株式会社電通オペレーション・パートナーズ
株式会社電通総研
株式会社電通総研セキュアソリューション
株式会社電通コーポレートワン

コア業務への時間を創出するため、ノンコア業務をアウトソースするしくみを構築

少子高齢化に伴う労働人口の減少に伴い、日本全体の重要課題となっている働き方改革。政府も 2019 年 4 月に働き方改革関連法を施行しており、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現を推し進めています。このような動きに先鞭をつける形で労働環境の改革に取り組んできたのが、株式会社 電通 (以下、電通) です。同社は日本を代表する広告会社であり、2020 年 1 月に純粋持株会社体制へと移行。現在は国内外約 850 社で構成される電通グループとして、多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。

電通における労働環境改革について「2016 年 11 月には労働環境改革の推進を目的に『電通労働環境改革本部』を設置し、“8 つの柱” からなる労働環境改善策を進めてきました」と語るのは、電通 第20ビジネスプロデュース局で戦略企画部長・統括プロデューサーを務める仲野 隆 氏。その一環として、業務の効率化や生産性向上への取り組みも行ってきたと説明します。

2018 年には業務効率化/生産性向上を積極的に後押しするため、当時、電通のコーポレート部門であったビジネスプロセスマネジメント局 (現 株式会社電通コーポレートワン) が中心となり、電通オペレーション・パートナーズ、電通総研 (当時 株式会社電通国際情報サービス) などの電通グループ各社から専門性の高い人材やノウハウを集約したチーム「センターオブエクセレンス (CoE)」を創設しました。ここで大きなテーマとなったのが、社員の時間をどのようにして「創出」するかでした。

「社員が行っている業務は、重要度と緊急度という 2 軸でマッピングできますが、労働時間が限られている中でより大きな価値を生み出すには、重要度の高いコア業務にどれだけの時間を割けるかがポイントになります。しかし実際の電通社員は、緊急度が高いだけのノンコア業務に多くの時間を割かれてしまう傾向がありました。このノンコア業務を少なくすることで、コア業務に注力できる時間をより多く生み出すことが、重要な課題となったのです」 (仲野 氏)。

そこで、仲野 氏が所属する第20ビジネスプロデュース局と CoE は、ノンコア業務のアウトソース化に向けた取り組みに共同で着手。簡易翻訳、提案で使用するプレゼンテーション資料の作成、公開情報を使った簡易調査など、複数のノンコア業務を標準サービスとしてラインアップし、電通グループ内でビジネス プロセス アウトソーシング (BPO) 事業を担う株式会社電通オペレーション・パートナーズに、アウトソースできるしくみを構築していきます。

2020 年には、このしくみを「Smart Work コンシェルジュ (SWC)」と命名。Microsoft Teams や Microsoft Forms、Microsoft SharePoint Online と Web ページを組み合わせたサービス申込みや、Azure AI Search (旧 Azure Cognitive Search) を活用したチャット ボット (ユーザーの質問に対してアウトソースできる標準サービスを提案するもの) などが実装され、SWC の PoC が進められていきます。

さらに 2022 年 4 月には、SWC のサービス基盤を社内リリースし、ノンコア業務の「刈り取り」を本格的にスタート。まずは電通社内で営業活動を担っているビジネスプロデュース部門を対象に展開し、同年 9 月にメディア部門やマーケティング部門、クリエイティブ部門へと対象を拡大します。そして 2022 年 11 月に、SWC の全社公開が実施されたのです。

複雑化していた SWC のシステム、Azure への統合で業務フローを効率化

このように SWC の展開が進められている中で、チームはある決断を下します。それは、SWC を支える IT システムを今一度見直し、将来に向けて最適化しておく、ということです。

「SWC のシステムは段階的に機能を拡張してきた結果、複数ベンダーの製品やサービスが混在した複雑な構成になっていました」と語るのは、SWC のシステム面を担当する株式会社電通総研 (旧 株式会社電通国際情報サービス) コミュニケーションIT事業部 戦略ビジネスユニット RPAビジネス部 RPA推進グループで、プロジェクトマネージャーを務める森川 隼人 氏。その中には、CoE が設置されたころから案件管理で利用されていた、マイクロソフト以外の CRM サービスなども含まれていたと振り返ります。

「SWC の全社展開にあたり、アウトソースの業務フローそのものを効率化するため、これらを API で連携させることが検討されました。しかしそれにはかなりの工数がかかることがわかり、複数ベンダーのサービスを使い続けるとライセンス料がかさんでしまう、という問題もありました」 (森川 氏)。

これに加えて「マルチベンダーで構成された複雑なシステムでは、拡張が難しくなるという懸念もありました」と指摘するのは株式会社電通コーポレートワンでスマートワーク推進オフィス ソリューションマネジメント室長を務める奥村 卓也 氏です。SWC の利用を長期的に広げていくには、ユーザーやサービスが増えた際にも、高度で安定したしくみを確立する必要があるのだと語ります。

このような問題や懸念を払拭するために選ばれたのが、Azure への統合です。その理由を森川 氏は次のように説明します。

「Azure に統合すればサービス間の連携が容易に実現でき、ライセンス料も大幅に削減できます。また電通社員が日常的に使っている Microsoft 365 や Microsoft Teams と、親和性が高いというメリットもあります。さらに、電通では認証基盤に Microsoft Entra ID (旧称、Azure Active Directory) を利用しているため、ユーザー管理などの運用も容易になります。このようなことをすべて考慮した結果、Azure が最も優位性が高く、理にかなった選択だと判断しました」。

2022 年 11 月には他社 CRM サービスで管理されていた案件情報を Microsoft Dataverse へと全面的に移行。Power Platform を活用した案件管理が実装されます。その一方で、ユーザーからの申込みや問い合わせの窓口は、Microsoft Teams へと一本化されています。

「それまでは申込みの窓口が複数あり、事務局に人を配置した対応も行っていました」と振り返るのは、SWC でアウトソースされた業務を実際に行う電通オペレーション・パートナーズで、経営企画部 部長を務める山本 裕介 氏。それらの窓口が Microsoft Teams に一本化されたことで、申込みや問い合わせへの対応の「抜け漏れ」がなくなり、回答品質も向上したと述べています。

生成 AI 活用でアウトソースした業務の効率化も推進、2023 年末には SWC の ROI が 340% に

しかし SWC システムの見直しは、これで終わったわけではありません。チームではさらに生成 AI にも着目。これを SWC に組み込むための取り組みも開始したのです。

「Azure への統合と同じころに ChatGPT に着目し、自然言語であれだけのことができるのは驚異的だと感じていました」と仲野 氏。これを SWC に組み込めれば、ユーザー体験を大きく高めると共に、サービス品質の向上も可能になると考えたと言います。

電通が Azure OpenAI Service の利用申請を行ったのは、マイクロソフトが Azure OpenAI Service の一般提供を開始した 2023 年 1 月。その後、チャット ボットのバックエンドとして、Azure OpenAI Service が組み込まれていきました。ユーザーからの問い合わせに生成 AI が回答することで、より自然なやり取りを行えるようにしたのです。「必要なサービスの選択や申込みが行いやすくなった結果、SWC サービスへの月間申込み数は以前よりも 20% 増えました」 (仲野 氏)。

これと並行して、電通オペレーション・パートナーズが請け負う業務でも、Azure OpenAI Service の活用が進められていきます。その一例として山本 氏が挙げるのが、公開情報を基にした簡易調査への適用です。これによって、以前は半日程度かかっていた作業が、1 ~ 2 時間で完了するようになったと言います。

「この他にもさまざまな形で Azure OpenAI Service の活用が行われています」と言うのは、電通総研の森川氏と共に SWC のシステム面を担当している、株式会社電通総研セキュアソリューション (旧 株式会社 ISID-AO) デジタルビジネス推進事業部 クライアントプラットフォーム部の田渕 裕章 氏。その中には、今後予定しているものも含めると、競合他社が行っているキャンペーンの調査や、広告における各種表現チェック、ユーザーが入力した単語から連想される言葉を生成する『壁打ち』アプリなどの提供があると説明します。「さらにインターネット調査のサマライズも、電通オペレーション・パートナーズによって試験的な活用が進められています」。

このような生成 AI の積極的な活用もあり、アウトソースに要したコストに対する創出時間価値の割合 (ROI) も大幅に向上しつつあります。2023 年末には 340% を超えています。

「今後は Azure OpenAI Service だけではなく、Microsoft Copilot の活用も進めていきたいと考えています」と田渕 氏。SWC は「ヒト x テクノロジー」で構成されたサービスであり、人が行っている業務をより多くテクノロジーに任せることができれば、人はより高次元な仕事に注力できるようになり、SWC のスピード感と効率も高められるはずだと言います。

その一方で、SWC の利用組織を広げていくことも、今後の重要課題だと仲野 氏は指摘します。

「SWC の利用組織は社内全体の半分にまで広がってきましたが、ノンコア業務を自分で行っている社員もまだ数多くいます。利用組織が現在の 2 倍になれば、SWC の価値はさらに大きなものになるでしょう」。

これに加えて山本 氏は「SWC は電通だけではなく、幅広い企業の悩みに応えられる枠組みになるはずです」と言及。将来はこれを、グループ会社や関係会社にも展開していきたいと述べています。

また奥村 氏は、「生成 AI をはじめテクノロジーが格段に進化している一方で、そのテクノロジーを使いこなす人とそうではない人のギャップも拡大していきます。我々 SWC は、「ヒト x テクノロジー」によってそのギャップを埋めることでチームや組織全体の効率化、生産性向上を目指したいと思っています」と話します。

「現在の SWC は、まだまだ完成形には達していません」と仲野 氏。これが今後どのように発展し、どれだけの社員の時間を創出していくのか。これからも目が離せない取り組みだと言えるでしょう。

“労働時間が限られている中でより大きな価値を生み出すには、重要度の高いコア業務にどれだけの時間を割けるかがポイントになります。そのためにノンコア業務をアウトソースできるしくみを提供するのが、Smart Work コンシェルジュ (SWC) です”

仲野 隆 氏, 第20ビジネスプロデュース局 戦略企画部長 統括プロデューサー, 株式会社 電通

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