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2024/06/26

膨大なユーザーテクノロジと発電所運営のノウハウをデータベース化した JERA。Azure を活用したデータドリブンなオペレーション & メンテナンスの実現へ

株式会社 JERA(以下JERA)は、国内の発電電力量の約 3 割を供給する国内最大のエネルギー企業です。「世界のエネルギー問題に、最先端のソリューションを提供する」というミッションのもと、電力の安定供給を目的とした燃料調達や発電設備の運用保守などを、国内外で展開しています。

持続可能な社会の実現に向けたエネルギーの脱炭素化の流れは世界中で勢いを増しており、エネルギー会社には化石燃料に頼らない新時代のエネルギー供給が求められています。また、少子高齢化による労働人口の減少に伴う担い手不足や、国によって異なるエネルギー事情への対応も、エネルギー業界における大きな課題となっています。

JERA はこれらの課題に対応するため、太陽光や風力に代表される再生可能エネルギーと、発電時に CO2 を排出しないゼロエミッション火力とを組み合わせて活用する「JERA ゼロエミッション 2050」の実現に挑戦しています。さらにこれまで蓄えた膨大なユーザーテクノロジと発電所運営のノウハウをデータベース化し、そこに最先端のデジタル技術をかけあわせた「データドリブンなオペレーション & メンテナンス」の実現に向けて、さまざまな取り組みを行っています。

JERA

課題解決につながる働き方の変革を目的としたデジタル パワー プラント(DPP)プロジェクト

「脱炭素、グローバル化、少子高齢化という大きな社会構造の変化に対応しながらエネルギーの安定供給を維持するためには、これまでの働き方を変革する必要があると考えています」と語るのは、株式会社 JERA O&M・エンジニアリング戦略統括部 G-DAC部長の手川 典久氏。「一方で、これまで培ってきた現場の技術やノウハウには、高い価値があることも忘れてはいけません。この“現場力”を維持、継承しながらよりよい働き方を実現するためには、デジタル技術が必要不可欠だと考えています」(手川氏)。

手川氏によると、現場で蓄積された技術やノウハウは、これまでは主に現場内でのみ継承され、社内全体での共有が不足していました。「デジタルの力でこれを標準化し、さらに高度化することが、これからの当社の成長には必要な取り組みだと考えています」と力を込めて語ります。

JERAではこうした信念のもと、本社と発電所の技術者が一同に会し、最新テクノロジを駆使したソリューションをアジャイルに開発する DPP(デジタル パワー プラント) プロジェクトを立ち上げました。

より高みを目指して、マイクロソフトをパートナーに選定

このプロジェクトを現在リードするのは、株式会社 JERA O&M・エンジニアリング戦略統括部 デジタル パワー プラント推進部 部長の亀井 宏映氏。亀井氏は、「DPP プロジェクトが目指すのは、設備と人、データ、ナレッジをつなげることで、さまざまな人財が共創できる働き方の実現と、新たな価値の創造です」とその意義を語ります。

同社ではこれまでも、AIを活用した予兆検知アプリを自社開発するなど、高い技術力を生かした DX を進めてきました。DPP プロジェクトによって、その動きはさらに加速することになります。2023 年 7 月には遠隔で発電所のモニタリングを行うグローバル データ アナライジング センター(G-DAC)を設置。遠隔監視サービスの 24 時間提供体制を構築しています。

「遠隔監視サービスを24 時間化することで、トラブルの未然防止や迅速な原因特定による発電所稼働率向上といった価値を提供できるようになります。こうしたデジタル技術やデータを活用した変革を通してエネルギーの安定供給とサステナブルな発電所運営に貢献することが、DPP の最大の役割です」(亀井氏)。

一方で亀井氏は、自社開発の限界も感じていたと語ります。現場をよく知る自社エンジニアによるアプリ開発はアジャイルに進められますが、より高度なアプリやシステム開発を実現するには技術やノウハウが不足していました。
そこで同社では、DPP プロジェクトをさらに力強く前進させるために、デジタル テクノロジのプロフェッショナル企業であるマイクロソフトを、戦略的協業のパートナーに選定しました。

「DPP プロジェクトを加速するためには、クラウドや AI といった最先端のデジタル テクノロジを強みとするマイクロソフトさんとの協業が必要だと考えました」(亀井氏)。

時間と空間の壁を超えるコミュニケーション プラットフォーム

両社は 2022 年末頃からミーティングやワークショップを繰り返し、目指すべきゴールや両者のシナジーが生み出す価値についての綿密な認識合わせを実施。2023 年 7 月にパートナーシップ契約を締結しました。
そして両社の初めての協働プロジェクトとして発案されたのが、デジタル ツインとメタバースの技術をかけ合わせたインダストリアル メタバースと生成 AI の技術を活用した革新的なコミュニケーション プラットフォームの開発でした。

「当時、私たちはジレンマを感じていました」と開発の背景を語るのは、株式会社 JERA O&M・エンジニアリング戦略統括部 DPP推進部 DPP開発ユニット 兼 G-DAC デジタルサービスユニット主任の鳥居 威仁氏。

「G-DAC を通して遠隔監視サービスを提供してはいるものの、遠隔であるがゆえに顧客である発電所の現場担当者とのコミュニケーションは電話かメール、もしくは Web 会議が中心となっていました。そこには時間と空間の壁があり、さらには、顧客が海外企業の場合は言語の壁もある。伝えたいことが相手に十分伝わりにくいという課題があったのです」(鳥居氏)。

この課題を解決するために、ワークショップの話し合いから導き出されたのは、G-DAC のデータ アナリストと発電所の現場担当者がインダストリアル メタバース内のバーチャル ルームに集まり、デジタル ツインで再現されたアプリやデータを使って対話するシステムです。

バーチャルルーム内に表示される、「エンタープライズ ナレッジ アドバイザー(EKA)システム」には、Azure OpenAI Service を活用した自然言語で過去のデジタル アーカイブからトラブルの解消法を検索する機能を実現。さらに相手が海外企業の場合には互いの言語がリアルタイムに自動翻訳される仕組みも取り入れており、まさに新しい時代のコミュニケーション システムとなりました。

相互理解をベースに、アジャイルな開発を実現

亀井氏は、「このシステムが実現すれば、今後の DPP プロジェクトが大きく飛躍できるはず、という期待を抱いたのを覚えています」と振り返ります。
「これまで蓄えてきたデータや、作ってきたアプリをひとつのプラットフォームに集約でき、かつ時間と空間、言語の壁を越えて活用できる。非常に大きな可能性を感じました」(亀井氏)。

このプロジェクトが始動したのは 2023 年春頃のこと。同社は、2023 年 10 月に予定されていた新姉崎火力発電所の全号機営業運転開始に伴う報道公開に合わせて、このコミュニケーション システムのプロトタイプを新姉崎火力発電所に適用することを目標として設定しました。

報道公開まで残された期間は半年ほどしかありません。しかし繰り返し開催されたワークショップを通して、JERA はマイクロソフトが提供できる技術力を、マイクロソフトは JERA の課題やビジョンを十分に理解していたため、期限までに実装は可能と判断されました。

そしてその目論見どおり開発はアジャイルに行われ、2023 年 10 月 10 日に行われた報道公開では、世界最高水準の発電効率を誇る最新鋭の発電所とともに、JERA とマイクロソフトが初めて取り組んだ共同開発の成果を発表することができたのです。

人財が集い、共創する空間をつくり出したことに価値がある

このシステムは現場に実装された後、業務プロセスにおけるモニタリングを実施しながら改善が加えられていくことになります。亀井氏は「EKA に JERA のナレッジを蓄え続けていくので、AI の検索結果にどんな変化が見られるのか楽しみです」と期待を寄せます。
また手川氏は、個々の機能をブラッシュアップしていくことは当然として、このシステムが持つ真の意義は別のところにあると力を込めます。

「私たちの DPP プロジェクトは、時間と空間を超えてつながり、曖昧なことが明確になる世界の実現を目的としています。ですから今回の共同開発プロジェクトにおいては、自動翻訳での会話ができたり自然言語で検索ができたりといった機能の実装よりも、誰もがいつでもどこでも集まれて、価値を共創できる“場所”をつくり出せたということに大きな意味があると考えています。かつ、この短期間でこれほどイノベーティブな仕組みを実際の業務に落とし込む一歩手前まで進められた。この成果を高く評価したいと思っています」(手川氏)。

JERA とマイクロソフトの協業プロジェクトはまだ始まったばかりであり、中長期的な展開を見据えた活動はこれから本格的に始動することになります。
我が国のエネルギー業界を牽引する JERA と先端テクノロジを追求するマイクロソフト。この両社が手を携えることで、まだ見たことのない革新的なソリューションの創出や働き方の劇的な改革、そして業界や国を変革し得るイノベーションの萌芽を、私たちはそう遠くない未来に目撃できるかもしれません。

(※所属・役職についてはインタビュー当時のものです)

“「現場力」を維持、継承しながらよりよい働き方を実現するためには、デジタル技術が必要不可欠だと考えています”

手川 典久, Global Data Analyzing Center 部長, O&M・エンジニアリング戦略統括部

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