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2024/08/07

イオングループの AI によるビジネス変革。Azure 環境のもと様々な AI 技術を駆使し、膨大な顧客データから新たな価値を生み出す​

イオングループ約 300 社から日々生み出される膨大な顧客データ。それらを活用し、顧客満足度向上や店舗運営変革を目指す取り組みが進められています。事業横断でのデータ活用を担っているのがイオン データイノベーションセンター ( 以下 DIC) です。内製化を主軸とし、新たな価値創出のために様々な AI 技術を駆使しています。

AI による開発環境として、DIC が利用しているのが Azure です。Azure OpenAI をはじめとする Azure の機能やサービスをフルに使ってソリューションを開発し展開しています。DIC の AI 活用の取り組みは、データ活用環境の整備、PoC (概念実証)による検証を行う「ステップ 1」から、PoC で手応えを得た AI モデルを展開する「ステップ 2」に入りました。今後、事業会社と共に AI モデルを発展させていきます。

イオン株式会社

グループ企業約 300 社が保有する顧客データを活用

年間延べ数十億人の顧客数を有するイオングループ。GMS( 総合スーパー ) を中核に、SM( スーパーマーケット )、DS( ディスカウントストア )、ヘルス&ウエルネス、総合金融、ディベロッパー、サービス・専門店、物流など多角的に事業を展開しています。2025 年 2 月期の連結営業収益(売上高に相当)は 10 兆円の見通しです。同社の成長を支えているのが基本理念「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」です。理念の最後に決意が述べられています。「その使命を果たす企業集団として永続するために、お客さまを原点に絶えず革新しつづけてゆきます」

イオングループは、業務のデジタル化にとどまらず、ビジネスプロセスを改革するべく DX に積極的に取り組んでいます。顧客接点のデジタル化が進む中、「お客さま原点」とした革新は新しいフェーズに入りました。イオングループ約 300 社が保有する顧客データの活用です。イオン 羽生有希副社長をトップとするデジタル担当配下に、2021 年 3 月、事業横断的な組織として DIC が設立されました。「顧客接点で日々発生する膨大なデータを収集し、新たな価値を創出する方法論を作り出しグループに展開していくのが DIC の役割です」とイオン株式会社 チーフデータオフィサー データイノベーションセンター長 中山 雄大 氏は話し、こう続けます。

「DIC が最初に取り組んだのは、イオングループのデータ活用方針の作成でした。方針の中で、各社のデータはイオングループ全体の戦略に欠かせない“資産”であると明記しました。その資産を活用することでお客さまのニーズを多面的に理解し、最先端のデータサイエンスの“力”を使ってお客さまの体験価値向上と利益最大化の両立を目指します」(中山氏)

イオングループは、データの基づく科学的なアプローチにより、お客様の体験価値向上と利益最大化を両立させています。

DIC は、必要なタイミングで必要な分析を行うために内製化を主軸としました。データサイエンティストも優れた人材を集めています。設立から 3 年間は「ステップ 1」と称し、データ活用環境の整備とともに、事業会社と一緒にPoC(概念実証)を実施。現在、「ステップ 2」では、需要予測、価格最適化など PoC を通じて効果や発展性が見込めるとわかったソリューションの事業展開を進めています。

AI が小売業を変える 3 つのケーススタディ

DIC では、AI 開発環境として必要な機能やサービスがそろっている Azure を利用しています。AI が小売業をどう変えるのか。Azure 環境で開発が進むケーススタディとして、1.商品情報自動生成、2.景気動向可視化、3.出店予測の 3 つを紹介します。

  1. 商品情報自動生成

イオングループの EC で扱う商品数は膨大です。EC 担当者のもとに毎週数百の商品が届くケースもあります。ECでの集客や収益増大のために、EC 担当者はサイト上に掲載する商品紹介文の作成に多くの手間と時間をかけていました。「難しいのは、サイトの制限に合わせた文字数で、消費者の購買意欲を促進する文章を作成しなければならないことです。すべての商品にきめ細かく対応するのは限界がありました」とイオン株式会社データイノベーションセンター プリンシパルデータサイエンティスト ディレクター 趙 コン 氏は背景を話し、こう続けます。

「生成 AI がメーカーから提供された商品情報などをもとに商品紹介文を作成するツールを開発しました。毎週数百届く商品の紹介文も生成 AI なら短時間で作成できます。担当者はそれをチェックするだけです。PoC を実施した結果、従来に比べて半分以上の工数削減が図れました。驚いたのは、生成 AI の訴求力です。AI が紹介文を作成した商品群は、担当者が作成した紹介文の商品群よりもPV(ページビュー、ページが開かれた回数)が 2 倍以上でした。また、検索されやすいキーワードを埋め込むといった SEO (検索エンジン最適化)も AI は得意領域ですね」(趙氏)

商品情報自動生成ツールの応用として、画像生成と組み合わせてパッケージや店頭 POP( ポップ ) のデザイン作成も視野に入れています。

  1. 景気動向可視化

小売業の売上は、景気によって大きく左右されます。しかし、公的機関等が公表する景気動向指数は、タイムラグが大きく、消費者の生活実感との乖離など現場業務で活用しにくい側面があります。タイムリーに日々の景況感が分かれば、陳列レイアウトや商品ラインナップを変えることで、ビジネス機会が拡大し売上増加につながります。DIC が着目したのは、イオングループにおける日本全国の店長の景況感と、リアルタイム POS データ解析による科学的アプローチの融合です。その狙いについて、イオン株式会社データイノベーションセンター統括マネージャー 八木 研一郎 氏は話します。

「毎月、全国イオングループの店長を対象に、店舗景気状況に関するアンケートを実施しています。アンケート結果と売上実績データを照らし合わせることで、景気に敏感な商品が分かってきました。このツールを利用することで、景気が悪いと売れる商品など私自身も面白い発見がたくさんありました。実感を伴う景気動向可視化は、全国に多数の店舗を持つイオングループだからできることだと思います」(八木氏)

アンケートでは、店長が景気に関して良い、悪いと感じた理由も記載されます。例えば、「公共料金、食品の値上げで節約感が充満している」、「コロナ 5 類変更に伴い、飲食店や観光などへお金が流れている面が見える」など、現場で指揮を執る「プロ」だから見える“気づき”があります。しかし、テキストで書かれたコメントにすべて目を通すのは大変です。生成 AI を使って全コメントを要約したサマリーを作成しています。「サマリーを読むことで、表示されているグラフが表す景気の良し悪しが、何によってもたらされているのかが分かることで納得感が深まります。自身の経験や勘に加え、定量的・定性的データに基づくことで確信を持って施策を打つことができると思います」(八木氏)

  1. 出店予測 AI

出店戦略では、立地条件、競合店舗数、動線、人流、商圏、人口動態など様々なデータの活用が必要です。従来、必要なデータを集めるだけで多くの工数かかることに加え、データの正確性にも課題がありました。「イオングループは全国各地に多くの店舗を展開しており、出店に必要なデータがそろっています。他社の追随を許さない優位性は、登録会員数約 9,000 万人の WAON POINT 会員データを活用できるという点です。会員情報に基づき、地域ごとのお客さまの傾向を把握できることは、店舗戦略の重要な要素となります。例えば、共働きの夫婦が多いエリアであれば冷凍食品の需要が高いので、冷凍ゾーンのスペースを大きくとる。冷凍ゾーンスペースのサイズは、売り上げに大きな影響を及ぼします。お客さまのライフスタイルも出店予測AIの要素のひとつとなっています」(趙氏)

従来、出店予測はデータ収集・分析し活用するまでに多くの時間がかかりました。DIC が開発した出店予測 AI は、日本地図上の任意の場所をクリックすると、そこで出店した場合の1日の売上予測を瞬時に表示。簡単さとともに、イオングループの顧客データとノウハウを生かすことで高い予測精度を実現しています。

AI によるデータ活用で様々なマイクロソフト製品を利用

DIC では AI を使ったデータ活用において様々なマイクロソフト製品を利用しています。「音声認識、翻訳、テキストマイニングなど Azure AI 上で使える機能をすべて利用しており、信頼性のある結果を出してくれています。また、Azure OpenAI は生成 AI の有力な選択肢の1つであり、GPT-4 は非常に優れていると思っています。さらに、Web アプリケーションをホストする環境を提供する Azure App Service、APIを管理する Azure API Management、コンテナを展開できる Azure コンテナ サービスなど、利用シーンは多岐に渡ります」(趙氏)

AI の活用では、技術革新のスピードに追随することが求められます。「マイクロソフトとは月次ミーティングを行っており、最新技術も紹介してもらっています。問い合わせに対するレスポンスも早く、手厚いサポートはスムーズな開発に寄与していると思います。また、経営層は、小売業における海外先進事例の情報提供も期待しています」(中山氏)

AI によるデータ活用の「ステップ 2」では、開発とともに運用のフェーズに入ります。今後の展望について中山氏は話します。「PoC で検証した AI モデルを事業会社に向けて展開しています。エラー時の対処、レイテンシーといった運用上の課題や、各社からの要望への対応など、事業に寄り添った AI モデルの発展が重要なテーマです。また、人手で行っていた作業を生成 AI で代行できる領域を探るとともに、事業会社からの相談も増えており、現場起点の開発も行っています。さらに、経営戦略への AI モデルの活用にも取り組んでいきたいと思います」(中山氏)

AI を活用し小売業の未来を拓くイオングループ。マイクロソフトは、Azure 環境やサービス提供、サポートを通じて、国内小売業のAI活用を牽引するイオングループを支援していきます。

“「DIC が最初に取り組んだのは、イオングループのデータ活用方針の作成でした。方針の中で、各社のデータはイオングループ全体の戦略に欠かせない“資産”であると明記しました。その資産を活用することでお客さまのニーズを多面的に理解し、最先端のデータセイエンスの“力”を使ってお客さまの体験価値向上と利益最大化の両立を目指します」”

中山 雄大 氏, チーフデータオフィサー データイノベーションセンター長, イオン株式会社

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