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2024/08/20

住友商事が日本企業初の Copilot for Microsoft 365 をグローバル全社導入。従業員一人ひとりの生産性・創造性を向上し持続的成長を実現

強い事業が集まる「No.1 事業群」を目指す住友商事。実現に向けて生成 AI の活用にグループ全体で取り組んでいます。同グループが生成AIを活用するアプローチとして、特定用途に特化したバーティカル (垂直) と、従業員が日常業務で利用するホリゾンタル (水平) の 2 つの観点で進めているということが非常に特徴的です。

そしてホリゾンタルの観点で採用したのが、Microsoft Copilot for Microsoft 365 (以下、Copilot for Microsoft 365) です。従業員が毎日使っている Microsoft 365 アプリに組み込まれているという特性を生かすことで、一人ひとりの生産性・創造性を向上できます。「使わない人にこそ使ってもらい、全従業員が Copilot for Microsoft 365 を使いこなす会社になる」というトップの強い“思い”のもと、グローバルで全社導入。1 年間で活用促進・定着化を実現するために、次々と施策を打ち出しています。

Sumitomo Corporation

従業員一人ひとりが利用する生成 AI の大きなポテンシャル

さまざまな分野でグローバル ネットワークを活用した事業を展開する住友商事。同社は、ダイナミックに変化する時代の転換点でさらなる飛躍を目指しています。前中期経営計画 SHIFT 2023 のもとで構造改革を断行し、新たな成長ステージへ進む環境を作り上げました。そして、中期経営計画2026で掲げたテーマが、競争優位のある事業が集まる「No.1 事業群」の実現です。強みを核とした成長、成長の原動力の強化、事業ポートフォリオ変革を推進し、社会課題解決を通じて持続的成長を果たしていきます。

No.1 事業群の実現に向けて鍵となるのが生成 AI の活用です。同社は 2 つの観点で生成AI 活用に取り組んでいると、デジタル戦略推進部長の塩谷 渉 氏は話し、説明を加えます。「1つめが事業の観点です。住友商事には、事業戦略単位で 44 の SBU (ストラテジック・ビジネス・ユニット) があります。事業の強み・競争優位を生成 AI で強化し、生産性や収益力の向上を図ります。さらに、デジタルを活用した事業変革、事業創造にも取り組んでいきます。いわば『デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ』です。2つめが経営の観点です。経験や勘に頼るのではなく、生成 AI によりデータに基づく意思決定を支援する、『経営の高度化』を進めていきます」

2023 年 4 月、住友商事はグループ全体で生成 AI を活用するために、CDO (最高デジタル責任者)・CIO (最高情報責任者) 傘下に生成 AI 活用ワーキング グループを組成。Azure OpenAI Service の利用・活用方法に関してマイクロソフトと連携し情報共有も行っています。2023 年 5 月には、グループにおける生成 AI の実装を支援するCoE (センター・オブ・エクセレンス) 組織「SC-Ai Hub (スカイ ハブ)」を設立。IT 企画推進部、法務部、グループ会社の DX 専門集団「Insight Edge」、システム インテグレーター「SCSK」にまたがり、ハブ的役割を担いながらスピード感を持って生成 AI の活用を推進しています。

「SC-Ai Hub におけるホリゾンタルのアプローチは、個別開発ではなくSaaSソリューションを使うというのが基本方針でした。グループの従業員が毎日使っているMicrosoft 365に生成 AI が組み込まれるという、Copilot for Microsoft 365 には高い関心を持っていました」(塩谷 氏) 

続けて、「さらなる成長を遂げるためには、従業員一人ひとりのモチベーションの向上や能力の最大化が求められます。ルーティン ワークや、ビジネスに直結しない内向きの仕事といった従業員満足度の低下を招く要因をいかになくすか。Copilot for Microsoft 365 を活用することで、単純作業から従業員を解放し創造的な仕事と向き合う時間を創出するとともに、さらに従業員の能力を引き出すことができます。従業員一人ひとりに焦点を当てて生成 AI を活用できることに大きなポテンシャルを感じました」と、塩谷 氏は語ります。

2023 年 9 月、同社は Copilot for Microsoft 365 を実際に使って実力を検証するべく、先行検証プログラム EAP (Early Access Program) に参加しました。EAP で提供を受けた 300 ライセンスは、海外ヘッドクォーターに100ライセンス、残りの 200 ライセンスは経営層、IT 投資の決定を行う IT 戦略委員会、ローコード開発ツール Microsoft Power Platform の社内コミュニティ、IT 企画推進部などを対象に配布。採用の決定権を持つ役員、IT スキルの高い従業員に触ってもらい、次のステップとなる導入に向けた感触を掴む狙いもありました。 

目指す企業像を実現するために Copilot for Microsoft 365 は必要

Copilot for Microsoft 365 は、メールや Teams など普段使っている機能で生成 AI を利用するため、経営層もメリットを身近に感じることができます。まず IT 企画推進部が経営会議で説明を行いました。検証段階の IT ツールの紹介も異例なうえに、会長以下約 30 人に対しハンズオンも実施。経営層が生成AI を 体験する意義について「経営層が自ら体験し、Copilot for Microsoft 365を活用し私たちの会社をどうしていくのか、イメージを持ってもらうことが必要でした」と塩谷 氏は話します。 

ハンズオンでは、「出張して長い時間飛行機に乗っている間にたまったメールの内容を、Copilot for Microsoft 365 が要約してくれる」など、経営層の業務に合わせたシナリオを作成。多忙で、なおかつ多くの情報を扱う経営層にとって要約機能のメリットは実感をともなうこともあり、導入にポジティブな意見が多くありました。

EAP でライセンス配布を受けたユーザーに対し、アンケートを実施した結果、「満足」との回答が 7 割を占めました。その理由について IT 企画推進部の伊庭 甫 氏は説明します。「業務で分からないことや、資料の格納場所などに関して、従来はメンバーに聞いていました。Copilot for Microsoft 365 を利用すれば、指示を入力するだけで必要な情報をすぐに入手できます。また、Teams で活用し会議の内容を効率よくキャッチアップすることで、定例会議の出席数削減も可能です。スピード感や、ストレスフリーの利便性、情報の検索性の向上などにより満足度が高まったと考えています」 

2023 年 11 月、マイクロソフトが主催する開発者や IT プロフェッショナル向けの年次イベント「Microsoft Ignite」に参加し、全社導入における考え方が大きく変わったと IT 企画推進部の浅田 和明 氏は振り返ります。「Copilot for Microsoft 365 に対する投資の規模、意気込み、パートナー連携による広がりなどの説明を聞いて、そのポテンシャルの高さを改めて認識しました。これから、できることがどんどん増えていく中で、今の機能だけを評価しても意味がないのではないか。Copilot for Microsoft 365 をインターフェースとして業務変革が起きると感じました」

同社は、EAP に参加しトライアルした結果や、そのポテンシャルの高さを評価し、Copilot for Microsoft 365 の全社導入を前向きに検討します。そこでポイントとなったのがライセンス数でした。Office アプリは業務内容によって利用するツールや利用頻度が異なることに加え、通常の IT 投資で行う導入前の効果測定も難しい面があります。「使いたい人に焦点を当て、実際に効果が見えたら拡大していくという方法も選択肢の 1 つでした。しかし、経営層の判断は異なっていました」と塩谷 氏は明かし、こう続けます。

「“使わない人たちにこそ、自身の生産性や創造性を高めるために使ってもらわなければならない。全員が使いこなし、飛躍的かつ持続的に成長する会社になる。目先の効果ではなく、目指す企業像を実現するために Copilot for Microsoft 365 は必要だ”というのが経営層の強い思いでした」 

全従業員・派遣スタッフに向けて 8,800 ライセンスを配布

「使わない人にこそ、使ってもらうべき」という考え方のもと、2024 年 4 月に住友商事は同社と海外ヘッドクォーターの全従業員・派遣スタッフに向けて 8,800 ライセンスを配布しました。社内導入を担当する IT 企画部門は、1 年間で定着まで持っていくために次々と施策を打ち出しています。

Copilot for Microsoft 365 の社内認知度をいかに高めていくか。最初に取り組んだのはムーブメントを起こすことでした。「オフィスにポスターを貼り、社内食堂で動画を流すなど自然な形で興味を持ってもらえるように雰囲気づくりに力を入れました。またメルマガも配信し、マイクロソフトの支援のもと利活用セミナーも開催しています。従業員に対して、『Copilot for Microsoft 365 は、電話や PC のように、誰もが当たり前に利用するインフラになる。先駆けて使って先行者利益を享受しよう』というメッセージを繰り返し訴えています」(浅田 氏) 

ユーザーにメリットを実感してもらうことが定着・活用促進のベースとなります。課題となるのが、Copilot for Microsoft 365 に対するプロンプト (指示文) にはノウハウが必要になることです。プロンプトの内容によってアウトプットが大きく変わるため、求めているものを得られないケースもあります。この課題を解決するために、プロンプトのテンプレートを作成し全社に展開しました。展開する仕組みを作った、IT 企画推進部の荻野 雄輔 氏は、テンプレートについて説明します。

「ユーザーがプロンプトをゼロから作るのはハードルが高いと思います。そこで諦めてしまうのはもったいないので、ユースケースごとにテンプレートを用意しました。画面上で、すでに作成されているプロンプトをコピーして貼り付けるだけで結果がでてきます。効果を実感することで、使う習慣を身につけてもらいたいというのが狙いです。実は、テンプレート共有アプリを開発したのも Copilot です。私は『こういうことがしたいから、コードを出してください』と Copilot に指示し、その結果を判断して修正を加えただけです」 

検索や要約だけでなく創造性向上の意義も大きい 

全社導入では事業ごとに実務が異なるため、汎用的な施策だけでは浸透しない点もテーマとなりました。定着に向けて、重要な施策となるのが、各 SBU で普及活動を担うアンバサダーの配置・活用です。事業に精通し、Copilot for Microsoft 365 を使いこなすアンバサダーが、ユーザーの身近な相談相手となることで裾野が広がります。Copilot for Microsoft 365 に興味・関心のあるユーザーをアンバサダーとラベリングし、活動しやすい環境を提供することで、各組織内での身近な相談役や、全社的なムーブメント醸成の一役を担っています。

効果的な施策を展開するうえで、PDCA サイクルをまわすことも大切です。現状を把握するために定量的・定性的効果の測定を行っていきます。従業員 8,800 人に対しアンケートを実施し、使い方や使い勝手など率直な意見を収集。また、従業員の働き方を可視化できるMicrosoft Viva Insights を活用し、Web 会議数や Office アプリの利用時間の削減といった定量的効果も測定します。現場の声とデータと、両方の観点から施策を検証・改善し効果を高めていきます。

Copilot for Microsoft 365 の導入意義について伊庭 氏は話します。「業務効率化により創出した時間を、お客様との会話など本来業務に当て従業員の収益力向上を図ることが重要です。また検索や要約だけでなく、アイデアの『壁打ち』相手になってくれるなど創造性向上の意義も大きいと思います」

Copilot for Microsoft 365 の能力は、利用できるデータに影響されます。「今は、既存業務プロセスの中で生じた情報は、それぞれが所管する場所で保存されています。Copilot for Microsoft 365 を最大限に生かすために、社内システムのあり方を見直すことも必要です。データ格納先を、SharePoint OneDrive に一元化することで、データ活用の幅が広がり、ユーザーの使い勝手や満足度が向上します」(浅田 氏) 

生成 AI を日常業務で利用する取り組みは同社にとっても初の試みです。手探りで進む中で、マイクロソフトの親身なサポートは心強かったと浅田 氏は話します。「検討からグローバル全社導入、定着活動、効果測定まで、きめ細かいサポートを受けています。情報提供はもとより、各プロセスにおける課題に対し相談するとすぐに回答してくれるので、速やかなアクションに繋がっています」

今後、住友商事で得た成功モデルを生かし、グループ会社への展開も検討されています。「住友商事では、Copilot for Microsoft 365 を全従業員で使うことを意思決定して取り組んでいます。この取り組みはまだスタートしたばかりです。成果に結びつけ、業務変革に貢献していくために力を注いでいきます」(塩谷 氏) 

「信用・確実」「浮利 (目先の利益) を追わず」「公理公益」に重きを置き、「進取の精神」で時代の変化を先取りしていく。「住友の事業精神」は今も変わることはありません。400 年にわたって脈々と受け継がれてきた DNA と、Copilot for Microsoft 365 を融合し、住友商事は新しい成長ステージを進んでいきます。 

“Copilot for Microsoft 365 を利用すれば、指示を入力するだけで必要な情報をすぐに入手できます。また、Teams で活用し会議の内容を効率よくキャッチアップすることで、定例会議の出席数削減も可能です。スピード感や、ストレスフリーの利便性、情報の検索性の向上などにより満足度が高まったと考えています”

伊庭 甫 氏, IT企画推進部 インフラシステム第二チーム ラインリーダー, 住友商事株式会社

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